16番歌 たちわかれ(中納言行平)
藤村さき
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立ちわかれ いなばの山の 峰に生ふる まつとし聞かば いま帰り来む
たちわかれ いなばのやまの みねにおふる まつとしきかば いまかへりこむ
作者が38歳のとき、因幡守になって山陰へと旅立つときに詠んだ別れの歌です。
現代語訳
お別れです。でも因幡の国の山に生える松のように「待っているよ」とあなたが言うならば、すぐにでも帰って来ましょう。
年齢を考えるともう会えないかもしれない「あなた」に向かって、「また帰って来たい」「待っていて欲しい」という気持ちを読み込んだ歌です。
二箇所にある「掛詞」
「因幡」と「往なば」、「松」と「待つ」がかけられています。
「猫帰しのまじない」として
この歌は、いなくなった飼猫の帰還を願うまじないとしても使われています。
作者:中納言行平
作者は中納言行平。在原行平のことです。
17番歌の作者業平は弟にあたります。
須磨への配流
『古今和歌集』によると、一時期須磨へ配流されたことがあるようです。
そのときに詠んだ歌が、のちの『源氏物語』須磨巻や謡曲『松風』の題材となったとされています(この16番歌ではありません)。
また須磨滞在時に、流れ着いた木片から、一弦琴である「須磨琴」を製作したと伝えられています。
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