02番歌 はるすぎて(持統天皇)
藤村さき
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春すぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山
はるすぎて なつきにけらし しろたへの ころもほすてふ あまのかぐやま
現代語訳
春が過ぎて夏が来たらしい。夏になると衣がかかるいう天の香具山に、白い衣がかかっているよ。
「白妙の衣」は初夏に咲く卯の花の比喩という説もありますが、シンプルに”白い衣”と解釈できます。
楮(こうぞ)や麻(あさ)で織られた白い衣は、夏の神事で巫女が身にまとうものです。
こうした清らかな美しいイメージとともに、季節が移り変わったことを歌で知らせています。
当時の人々にとって、季節のうつりかわりを味わえるのはめでたいことでした。政治や生活環境が安定しているからこそ、新しい季節を祝えるのです。
そしてそんな歌を天皇が自ら詠む、ということは、安定した時代、平和な落ち着いた時代の象徴でもあるのです。
原歌
この歌の原歌は、「春すぎて夏来たるらし白妙の衣ほしたり天(あめ)の香具山」(『万葉集』巻一・二八)です。
「天」と書いて「あめ」と読むのは上代の読み方で、のちに「あま」と変化していきます。この歌を、撰者である藤原定家が改変したとされています。
天の香具山
奈良県橿原市(かしはらし)にある山です。天界から降ってきたという伝承を持つ、聖なる山とされています。
甘橿明神(あまかしみょうじん)が人の言動の真偽をはかるために衣を神水で濡らして干した、という伝説もある山です。
持統天皇
第41代天皇。天智天皇の第二皇女で、即位前は天武天皇の皇后でした。
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