小倉百人一首 21-30
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21番歌 いまこむと(素性法師)

藤村さき
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いまこむと いひしばかりに 長月の ありあけの月を 待ちいでつるかな

いまむと いひしばかりに ながつきの ありあけのつきを まちいでつるかな

男が訪ねてくるのを待っていたのに来てくれなかった、そんな女の気持ちを詠んだ歌です。作者は男性ですが、女性の立場にたって詠んだ歌です。

現代語訳

あなたが「今行くよ」というから、わたしは待ち続けて、九月の有明の月まで待ってしまいましたよ。

当時の恋愛は、男性が女性のもとを訪れるものでした。「今行くよ」という男の言葉を信じて待ったものの、とうとう夜が明けて「有明の月」が昇ってしまいました。まるで月の出を待って起きていたかのようだと、女は感じてしまったのでしょう。

有明の月

有明の月

陰暦二十日以降の月で、夜が明けたあとも空に残っている月です。恋歌によく使われています。

作者:素性法師

良岑玄利(よしみねのはるとし)のことです。「三十六歌仙」のひとり。宇多天皇の頃の人です。

12番歌の作者遍照の子です。

出家後は雲林院(うんりんいん・うりんいん)に住み、後に大和国石上(やまとのくにいそのかみ。現・奈良県天理市)の良因院(りょういんいん)に移りました。

雲林院

現・京都市紫野にある臨済宗の寺院。鎌倉時代までは天台宗の官寺として栄えました。

菩提講・桜花・紅葉で有名です。

雲林院の菩提講は『今昔物語集』『大鏡』にも登場し、桜花と紅葉の名所としては『古今和歌集』以下の歌集の歌枕となっています。

『源氏物語』「賢木」にも雲林院が登場しており、作者とされる紫式部は雲林院周辺で生まれ育ったと言われています。

門前には西行の詠んだ歌も記され、在原業平が『伊勢物語』の筋を夢で語る謡曲『雲林院』の題材にもなるなど、歴史や文化と関わりが深い場所です。

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