小倉百人一首 1-10
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05番歌 おくやまに(猿丸大夫)

藤村さき
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奥山に もみぢふみわけ なく鹿の 声聞くときぞ 秋はかなしき

やまに もみぢふみわけ なくしかの こゑきくときぞ あきはかなしき

現代語訳

奥山で地面に敷かれたもみじを踏み分けて鳴く鹿の声を聞くとき、秋は悲しいと感じる。

「ぞ」+連体形の「係り結び」が入っています。

「ぞ」によって、前半部分が強調されることで、最後にさらっと述べられた「秋は悲しい」が本当に悲しく聞こえてきます。

鹿が鳴くのは妻を恋うてのことだそうです。

もみじを踏み分けているのは?

奥山でもみじを踏み分けているのはつい「鹿」だと考えてしまいますが、「作者」が踏んでいるとする解釈もあります。

わたしは「作者」がもみじを踏み分けて山奥に入っていると「鹿の声だけ」が聞こえてきた方が、悲しい雰囲気がよく出るので、「作者」が踏んでいると考えています。

ただ挿絵などでは、もみじを踏みしめながら切ない声で鳴く鹿の姿が描かれており、こちらも美しいと感じます。

ですので、どちらの解釈もありだと思います。

「もみぢ」は何の葉?

『古今和歌集』の原歌では「萩の黄葉」になっています。

しかし選者である定家は「楓の紅葉」と解釈していたようです。

作者:猿丸大夫

9世紀なかごろの人で、三十六歌仙のひとりです。

ただこの歌に関しては、『古今集』にも「よみ人知らず」とあり、本人の作ではないのではないかと言われています。

このように、『小倉百人一首』には、作者があやふやなものもいくつかあるようです。

鹿の鳴き声にも種類はありますが、この歌にあう雰囲気の鳴き声がYoutubeにありましたので、それを載せておきます。1:00あたりです。

研究

「秋は悲しい」という概念

「秋はなんとなく悲しい」という概念がどうして生まれたのでしょうか?

中国詩に「悲秋」という概念があり、そこから影響を受けていると言われています。

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