小倉百人一首 1-10
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09番歌 はなのいろは(小野小町)

藤咲
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花の色は うつりにけりな いたづらに わが身よにふる ながめせしまに 

はないろは うつりにけりな いたづらに わがみよにふる ながめせしまに

現代語訳

美しかった花の色はすっかり色あせてしまったなあ。長雨が降っている間に。わたしも年をとってしまったなあ。ただそれを眺めている間に。

有名ですが、読み解こうとすると難しいなあと思う歌です。

基本単語(※この歌で使われている意味のみでの解説です)

「花の色」は花の色合い。特に「桜」を指しているわけではなく、さまざまな春の花の色合いを示しています。「うつる」は色あせる・衰えるという意味です。

「いたづらに」は虚しい・はかないという意味で、力を尽くしたけれども報われず失望する感じです。

「眺む」は物思いにふけってぼんやりとする、という意味です。

掛詞が二箇所にある

掛詞(かけことば)の多くは、「自然」と「人間」が絡みあうことで形成される二重の文脈になっています。

この歌の場合も、「雨」と「わたし」のふたつの文脈で読み取れる構造になっていて、それらがイメージ的にも矛盾しないような単語でからみあい、かつふたつの文脈がお互いに意味を補い合っています。

「ふる」:「降る」「古る」の掛詞。

「ながめ」:「長雨」「眺め」の掛詞。

「雨」の文脈として読んだ場合

世に降る長雨のせいで、美しかった花が衰えてしまった

「わたし」の文脈として読んだ場合

物思いにふけってぼんやりとしている間に、わたしも年をとってしまった

作者:小野小町

「六歌仙」「三十六歌仙」「女房三十六歌仙」のひとり。

9世紀頃の人で、仁明天皇か文徳天皇に使える更衣であったと言われています。

謎の多い人物で、出生地と言われる場所も東北を中心に九州まで各地に点在しており、実人生がどうであったかはあまりよく分かっていません。

『古今和歌集』によると、文屋康秀が三河掾(みかはのじょう)となったとき、小町に一緒に行かないかと誘った、とされており、小町の返歌が『古今和歌集』雑下(ぞうのげ)・九三八に載っています。

この歌のやりとりがもととなって、のちの「深草少将百夜通い伝説」「小町落魄説話」などが生まれたとされています。

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