22番歌 ふくからに(文屋康秀)
藤咲
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吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を 嵐といふらむ
ふくからに あきのくさきの しをるれば むべやまかぜを あらしといふらむ
一字決まりの七首「む・す・め・ふ・さ・ほ・せ」のひとつです。
現代語訳
吹くとすぐ秋の草木がしおれるので、なるほどそれで山風を「荒らし(嵐)」というのだろう。
「荒らし」と「嵐」で掛詞になっていると同時に、山と風で嵐、という字合わせになっています。
「むべ」は「うべ」と同義で、推量を表す言葉とともに用いられることが多い単語です。中古以降は「むべ」とも表されるようになりました。
この歌は、息子の朝康の作であるとも言われています。
離合詩の影響
「山」+「風」=「嵐」などの字合わせの文字遊びは、中国六朝の離合詩の影響を受けたものです。
しかし、こうした漢字の成り立ちと意味が自然の摂理と合致しており、そこに新しい発見や感動も加わった、言葉遊びだけではない一首になっています。
離合詩の影響を受けた他の文字遊びの例
「山」+「山」=「出」
「人」+「山」=「仙」
「木」+「毎」=「梅」
「十」+「八」+「公」=「松」
など、たくさんあります。もっと複雑なものや、現代もつくられている新しい言葉遊び・なぞなぞなど、漢字を分解して遊ぶ文化は今でも受け継がれ続けています。
作者:文屋康秀
文琳とも呼ばれ、9世紀後半の人で、身分はそれほど高くありませんでした。
「六歌仙」「中古三十六歌仙」のひとりです。
37番歌の作者文屋朝康の父にあたります。
小野小町に「赴任先に一緒に行かないか?」と誘っており、仲が良かったと言われています。
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