【第30帖】藤袴(ふじばかま)【源氏物語あらすじ・解説】
光源氏37歳の秋の話。
秋、内大臣の母・大宮が物故し、孫にあたる夕霧や玉鬘らは服喪する。玉鬘入内の噂が高くなるにつれて求婚者たちの思いは乱れ、玉鬘の出自を知った夕霧も藤袴一枝を御簾に差入れて彼女に意中をあかす。
巻名は夕霧が詠んだ和歌「同じ野の露にやつるる藤袴あはれはかけよかことばかりも」に因む。
藤袴(ふじばかま)とは
秋の七草のひとつ。花が藤色で、花びらが袴の形をしている。
花言葉は、「ためらい」「遅れ」「あの日を思い出す」などがあります。また、乾燥させると桜餅のような甘い香りがすることから、「優しい思い出」という花言葉も持つとされています。
あらすじ
尚侍(ないしのかみ)になることを源氏からも実父からもすすめられている玉鬘は、祖母にあたる大宮の喪に服しながら、出仕を思い悩んでいました。
もしもお仕えする君と男女の仲になってしまった場合、中宮や女御は良く思わないだろうし、もう自分自身もたいして若くないという自覚もありました。源氏や実父との関係もどうにも曖昧で、強力な後ろ盾を期待しがたいように感じていたのです。
実父とひきあわせてもらって以降、源氏は道徳的に遠慮することもなくなったかのように、自分に戯れかかってくることも憂鬱でした。
そこへ夕霧が、父である光源氏の使いで訪れます。夕霧と玉鬘はいとこ関係にあたります。
夕霧は藤袴の花を差し出しつつ、秘めていた想いを訴えますが、玉鬘は取り合いませんでした。
源氏のところに戻った夕霧は、内大臣が世間の噂として「源氏の大臣が玉鬘を側室の一人にするつもりらしい」と言っているとして、その噂は本当なのかどうかを源氏に鋭く追及します。
夕霧の追及をかわした源氏ですが、内大臣の勘の鋭さには内心冷や冷やするのでした。
喪が明けて、玉鬘の出仕は10月に決定しました。
求婚者たちからは「諦めきれない」という内容の文がたくさん届きます。とりわけ髭黒や蛍兵部卿宮は熱心でした。玉鬘はその中で、蛍兵部卿宮だけに返事を送りました。