小倉百人一首 11-20

15番歌 きみがため(光孝天皇)

藤村さき

君がため 春の野にいでて 若菜つむ わが衣手に 雪はふりつつ

きみがため るののにいでて わかなつむ わがころもでに ゆきはふりつつ

ここでいう「若菜」は、早春の野に生える若草の総称で、これらを食べると邪気払い・病気除けになると言われていました。現代の七草粥に通じるものです。

現代語訳

あなたのために春の野に出て若菜を摘んでいるわたしの衣の袖に、雪がしきりに降っていますよ。

『古今和歌集』の詞書では「仁和の帝、皇子におはしましける時に、人に若菜たまひける御歌」となっており、まだ皇子だったころ、誰かに若菜を贈ったときに添えた歌とみられます。

誰に贈ったのかは定かではありませんが、相手の幸せと健康を願いながら自らの手で雪のまだ降る早春の野で若菜を摘む姿は、理想の天皇像として『百人一首』に採択するにふさわしいものだったのでしょう。

作者:光孝天皇

第58代の天皇。9世紀の人で、13番歌の作者陽成院のあとに55歳で即位しました。

『徒然草』『大鏡』などにもその名が出ており、即位後もかつての苦労を忘れないようにつとめ、家臣たちへの気配りを忘れない人物であったとされています。

文化活動にも熱心で、宮中行事の再興に務め、また鷹狩の復活や相撲の奨励も行いました。

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