【第18帖】松風(まつかぜ)【源氏物語あらすじ・解説】
光源氏31歳秋のお話。
対訳にはなっていませんのでご注意ください。
あらすじ
二条東院の完成
二条東院が完成した。
源氏は西の対に花散里を移らせた。
東の対には明石の御方を迎えるつもりだった。
しかし明石入道が源氏に「娘も住みなれたここを離れて上洛することに不安を抱えている」と文で伝えてきた。
明石入道は、大堰川近くの山荘(母方の祖父・中務宮の別荘)を修理し、娘をそこへ住まわせることに決めたという。ちょうど源氏が建てた嵯峨野の御堂も近くにある。
明石の御方は父入道を一人明石に残し、姫君や母尼君と共に大堰へとに移った。
しかし源氏はなかなか大堰を訪れることはなく、明石の御方は琴を爪弾きながら日々を過ごすのだった。
明石の上との再会
源氏は紫の上に気を遣いながらも、御堂の様子を見に行くとの口実でようやく大堰を訪れた。
明石の御方と3年ぶりの再会を喜び合い、また初めて見る娘の愛らしさに驚いた。
姫君を将来の后がねと考え、その出自の低さを補うためにも、一日も早く姫君を都へ迎えたいと考える。
源氏は紫の上に娘を養女として引き取って育てて欲しいと頼む。
元々子供好きなこともあり、紫の上は快諾する。
しかし娘と引き離される明石の御方の心を思いやると、源氏は悩むのだった。
簡単な解説
明石の御方は「受領(ずりょう)」階級の出身です。
実家は源氏もおどろくほど裕福ですが、貴族としての身分は高くないので、その娘もまた天皇に入内することはできません。
平安時代の貴族社会では、母親の身分が重要視されていました。
そこで、娘を、身分が高く出自もしっかりとしている紫の上の養女とすることで、将来の后候補となれるように、出自の低さを補ったのです。
また明石入道も、源氏が娘や孫をないがしろにしないよう策を練り、勿体をつけながら誘導していった、と考えることもできます。
明石の御方も、源氏と結ばれる前に「出自の低さ」を憂いていました。
娘のしあわせを思い、紫の上に娘を託した明石の御方が娘と再会できるのは、遠い先のはなしになります。