【第3帖】空蝉(うつせみ)【源氏物語あらすじ・解説】
光源氏17歳の夏のお話。
帚木(ははきぎ)三帖の第二帖目にあたります。
対訳にはなっていいませんので、ご注意ください。
主な登場人物
光源氏、小君(空蝉の弟)、空蝉、継娘
あらすじ
「わたしはこんなにも冷淡にされたことはない。人生は悲しいものだ。恥ずかしくて死んでしまいたいよ」と源氏がいうのを聞いて、小君は涙まで流していた。
翌朝早く帰って行った源氏に小君は物足りなさを感じながらも、気の毒に思った。
空蝉も申し訳なく思いながらも、男女の関係を続けるわけにはいかないと思い、これでいいのだと思っていた。源氏からの便りはもう来なかった。
だが理性ではそう思いつつも、空蝉の心はまだ物思いにふけっていたのである。
源氏はというと、ひどい人だと思う一方で、このままにしておくわけにはいかないという焦りも感じていた。
源氏は小君に、なんとかもう一度空蝉に逢えるようにしてもらえないかと頼んでいた。小君もまた、自分が頼られることが嬉しかった。
そのうちに紀伊守が任地に発ち、家に女性しかいなくなったとき、小君は源氏を案内して家へと連れてきた。
小君はまだ子供なので源氏は不安ではあったが、少年であるからこそ特に出迎えもなく、源氏も門内に入ることが出来た。
小君が格子を上げさせていたので、座敷内で空蝉と継娘が碁を打っているのが見えた。
女性陣の様子や容貌を観察していると、小君が申し訳なさそうにやってきて、「いつもいない人がいるから、姉に近づけない」と謝ってきた。
小君は客人が帰るのを待ってから、源氏を姉の寝室へと導こうとはりきっている様子である。
夜になり、小君は源氏を室内へと引き入れた。
源氏は極めて慎重に静かにふるまったが、よく眠れていなかった空蝉はその香りと物音に気付き、薄物を一枚残してそっと部屋を抜け出してしまった。
部屋の中には碁をいっしょに打っていた継娘も寝ていたので、源氏はそれと気づかず娘の傍に寄って行った。恋人よりは少し大きいような気がしながらも、疑うことはなかった。
しかしあまりによく眠っているので不審に思い、やっと源氏は人違いであると気付いた。
このまま出ていくのも怪しがられるのでどうしようかと思ったが、先刻見た美人であれば今夜の情人にするのも良いかと考えた。
目を覚ました娘は驚いていたものの、源氏は「方違えにたびたびここを選んだのはあなたに逢いたかったからだ」などと告げるのだった。
少し考えれば、継母との関係を疑うこともできたであろうが、娘はそれを疑うこともなかった。
源氏は新しい情人に「また逢いに来る」「秘密にしたいので手紙は小君に託す」と約束をとりつけ、本当の恋人が脱ぎ捨てていったであろう薄物を手に、部屋を出るのであった。
隣の部屋で寝ていた小君を起こし、小君を伴ってやっとのことで源氏は二条院へと帰り着いた。
源氏は小君に空蝉へと送る歌を託したものの、娘に送る手紙は出すのをやめた。
空蝉に会った小君は、今回のことに関して小言を言われてしまった。源氏からも姉からもいろいろ言われて心苦しかったが、空蝉への手紙はちきんと渡した。
空蝉は源氏からの手紙を読み、源氏が持ち帰った小袿は古くなかったかなど考えつつ、源氏の愛が身に染みて複雑な心持ちであった。
継娘も恥ずかしい気持ちで西の対に帰っていき、小君を見かけるたびに心が躍ったものの、男からの手紙が来ることは無かった。誰も知らない出来事であったから、ひとりで物思いにふけるのであった。
空蝉も冷静を装ってはいたが、娘時代であればよかったのにと思いながら、源氏の手紙に端に
うつせみの羽に置く露の木隠れて忍び忍びに濡るる袖かな
と書き添えてみるのであった。