【第35帖】若菜・下(わかな・げ)【源氏物語あらすじ・解説】
光源氏41歳三月から47歳十二月までの話。
あらすじ
冷泉帝の譲位
それから四年後、冷泉帝が東宮(後の帝)に譲位する。
これと同時に、太政大臣が隠居を申し出た。これより、致仕の大臣と呼ばれるようになる。
東宮には明石の女御腹の第一皇子が立った。
源氏は(藤壺の宮との密かな愛によって産まれた我が子が、御子の無いまま帝位を去るとは…)と、命を懸けた恋が身を結ばなかった事を密かに嘆く。
ある日源氏は、紫の上から「出家したい」と切り出されるが、紫の上が去った後の孤独を恐れる源氏は必死に懇願し、考え直すよう説得する。
住吉大社参詣
後日、源氏一行は明石入道の御願ほどきのため、明石一族を伴い住吉大社へ参詣する。
源氏はかつて須磨に蟄居した頃、先の太政大臣がはるばる訪ねてきた事を思い出していた。
明石尼君にこっそり歌を送り、尼君は源氏の心遣いに感涙する。
参拝を終え、その夜。東遊びが執り行われた。
翌朝。明石尼君のいる牛車を見た貴族は幸運をつかんだ一族を褒め称え、「明石尼君にあやかりたい」と噂する。
翌年の朱雀院の五十の賀に向け、源氏は女三宮に琴を教える。
紫の上、倒れる
年が明け、正月に六条院で華やかな女楽が催された。
女三宮、紫の上、明石の女御、明石の御方が揃って見事な演奏を披露したが、その晩に37歳の厄年だった紫の上が突然倒れる。
病状は好転せず、源氏は紫の上と共に二条院に移って看病に付き添った。
柏木と女三の宮
一方、柏木は女三宮の姉女二宮(落葉の宮)と結婚するが満足できなかった。
源氏が紫の上につきっきりで手薄になっていた隙をついて、乳母子の小侍従の手引きで女三宮と密通する。
その直後、紫の上が一度は絶命したがかろうじて蘇生する。その際に六条御息所の死霊が現れて源氏を戦慄させた。
後日、源氏は御息所の死霊を供養するため、紫の上に正式ではないものの在家で戒を受けさせた。
後日、女三宮が懐妊。
源氏と柏木
紫の上の病状も小康状態になった夏の末頃、見舞いにやって来た源氏は偶然柏木からの恋文を見つけ、事の真相に気付く。
小侍従は女三宮を責め、宮は源氏を前にして生きた心地がしない。
源氏もそんな女三宮に皮肉を言い、父院に心配をかけないようにとそれとなく説教する。
柏木もそのことを知らされ罪におののき、さらに六条院で行われた試楽の際、源氏に痛烈な皮肉を言われて病に臥した。
柏木の病
柏木の容態が「枕も上がらないほどの重態だ」と使いの者から知らされた、致仕の大臣と北の方は驚愕し、すぐさま実家に引き取る事を決断。
実家で療養する事になり、女二宮と一条御息所に涙ながらに謝罪し、一条の屋敷を後にした。
朱雀院の五十の賀は、暮れも押し迫った十二月の二十五日に行われた。