源氏物語
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【第45帖】橋姫(はしひめ)【源氏物語あらすじ・解説】

藤村さき
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薫20歳から22歳10月までの話。

あらすじ

八の宮

 その頃、世間から存在を無視されている古い親王がいた。桐壺院の八の宮(第八皇子)で、光源氏の異母弟である。

 母の身分も高く、東宮となってもおかしくない御方であったが、冷泉院が東宮だった頃に、これを廃し代わりに八の宮を東宮に擁立せんとの弘徽殿大后方の陰謀に加担させられたため、時勢が移るとともに零落していったのである。

 北の方も大臣の娘で、互いに信頼する相思相愛の夫婦であったが、子宝には恵まれなかった。ようやく姫君を授かり、つづけてまた姫君を授かったものの、北の方は亡くなってしまった。

 下の姫君のために奥方が亡くなったとして使用人たちがあまり世話をしないなか、宮は亡き妻の「この子だけを形見だと思い可愛がって欲しい」という遺言もあり、ことさらに可愛がるのであった。この姫君は非常に美しい姫君であった。

 姉君は静かで貴女らしく、容貌も身のこなしにも品の良さが見てとれる姫君であった。宮はこの姫君もたいそう可愛がった。

 しかし宮の財政はひっ迫しており、少しずつ、使用人も邸を去って行くような状態であった。妹君の乳母も良い方が見つからず、なんとか見つけても去ってしまったため、宮が自ら育てている有り様であった。

 邸はみごとなものであったが、家司にも良い方がいないために荒れ放題であった。宮も妻に先立たれて孤独な上、娘たちのために出家もできないために、ただ持仏ばかりを立派に飾り立てて、ただ仏道にまい進する日々を過ごしていた。

 再婚のすすめにも耳を貸さず、仏道の合間に姫君たちの世話をし、姫君たちに琴や碁などを教えながら暮らしていた。

 宇治山の阿闍梨から彼を知った薫は、その俗聖ぶりに強く惹かれ八の宮のもとに通うようになりますます傾倒してゆく。

八の宮の姫君たち

通い始めて3年目の秋、八の宮不在の宇治邸を訪れた薫は、有明の月の下で箏と琵琶とを合奏する姫君たちを垣間見る。

屈託のない、しかも気品高く優雅な姫君たちに、薫はおのずと心惹かれる。

薫は女房を介して大君に逢いたく思うが、代わりに老女房の弁が現れる。

弁は故柏木の乳母子(めのとご、乳母の娘)で、今は八の宮の侍女である。

弁は、薫の出生の秘密と柏木の遺言を伝えることを約束する。

また薫は、案内してくれた邸の従者に自らが着ていた直衣を贈る。

京に戻ってから薫は大君と弁の言葉が気になって頭から離れない。

薫は匂宮に宇治の姫君たちの存在を語り、匂宮はその話題にいたく興味を示し、「ついに薫にも恋が訪れたか」と驚く。

手紙

十月上旬、八の宮は姫君たちの存在を薫に打ち明け、死後の後見を託したいと願い出る。

その晩、薫は弁と昔語りをし、弁から手紙の束を入れた袋を受け取る。

帰京後、開けてみると柏木と女三宮の手紙の束がひどい黴臭と共に出てきた。

女三宮の出産を喜ぶ柏木の死の間際の筆跡のあまりのなまなましさに、薫はとまどいを隠せない。

母である女三宮を訪ねるが、無心に経を読む尼姿に接した薫は、秘密を知ったことを話す気になれなくなり、ひとり胸中に抱え込もうとするのだった。

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