小倉百人一首 11-20
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18番歌 すみのえの(藤原敏行朝臣)

藤咲
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すみの江の 岸による波 よるさへや 夢のかよひ路 人めよくらむ

みのえの きしによるなみ よるさへや ゆめのかよひぢ ひとめよくらむ

人目を忍ぶ恋を題材にして詠まれた歌です。男性の作者が女性の立場で詠んでいます。

決まり字は一文字目の「す」。一字決まりの七首「む・す・め・ふ・さ・ほ・せ」のひとつです。

現代語訳

住の江の岸には波が寄るというのに、夜までもですか?あなたが夢の中でも人目を避けて、わたしに逢いにきてくれないのは。

夢の中で恋人に逢うのにも人目を避けるのですかと、夢でも現実でも逢えない男性を嘆く歌です。

「住の江」

「住の江」は摂津国(現・大阪府)住吉の浦のことで、現在の住吉大社近くの海岸あたりを指します。

「夢の通ひ路」と当時の「夢」の解釈

「夢の通ひ路」は「夢路(ゆめぢ)」とも言われ、夢の中で往来する路のことです。

当時の「夢に出てくる人」の解釈は、「夢に出てきた相手の心が自分の心にまで入って来た」という解釈で、「自分のことを思ってくれているから夢に出てきた」と考えられていました。

参考:『夢の通ひ路物語』(ゆめのかよいじものがたり)

南北朝時代の作と見られる長編擬古物語です。作者は不詳で全6巻。『源氏物語』の影響が強い作品で、特に柏木と女三宮の話を下敷きにしたと見られています。

2015年の大学入試センター試験『国語』「古文」に出題されました。

「よく=避く」

「人めよくらむ」の部分は「ひとめ/よく/らむ」と分けられます。

「よく」は「避く」の意味で、「よける・避ける」という意味になります。

作者:藤原敏行朝臣

900年頃の人で、「三十六歌仙」のひとりです。清和天皇から醍醐天皇まで5代に渡って仕えました。

能書家としても有名で、小野道風が古今最高の能書家として空海と共に名を挙げています。

『宇治拾遺物語』では、頼まれて法華経を200部ほど書写した際に、魚を食べたり女性と関係を持つなど不浄のまま書写したため地獄に堕ちたと書かれています。

代表歌として、

「秋きぬと 目にはさやかに 見えねども 風の音にぞ おどろかれぬる」(『古今和歌集』秋上・一六九)

があります。

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