【第36帖】柏木(かしわぎ)【源氏物語あらすじ・解説】
光源氏48歳1月から4月までの話。
対訳にはなっていませんのでご注意ください。
あらすじ
春になり、病床に伏したままの柏木は死を覚悟し、また死を願ってもいた。
柏木は女三宮へと文を送った。
女三宮は返事を書くのをたいそう渋ったが、小侍従に強くせかされてために返事を書いた。小侍従はそれを持って柏木のもとへと赴き、語り合い、ふたりで涙にむせんだ。
柏木は女三宮の返事をとてもありがたく感じていた。
女三宮の出産と出家
その日あたりから陣痛が来て、女三宮は無事男子(薫)を出産した。
出生の秘密は誰も知らなかったので、皆が出産を喜び、六条院の夫人たちからもお祝いの品が届いた。
源氏は全ては自身の行いの報いだと思いつつも、生まれた子の顔も見ようとはしなかった。愛情が薄いと周囲はいうものの、女三宮は「きっと成長するにつれてもって愛情は薄くなるのだろう」とも感じていた。
女三宮はすっかり弱り切り、もう自分の命は長くないと信じていた。
話を聞き、朱雀院は密かに娘である女三宮を見舞い六条院へとやってきたが、その場で女三宮は朱雀院に自らの出家を願った。
源氏は引き留めようとしたが、女三宮の決意は固く、女三宮の将来を考えた朱雀院はこれが機会かと考え出家させることにした。その宵のうちに、朱雀院の手で髪を下ろした。
朱雀院は「宮の事は見捨てないように」と源氏に言い、自身が住む寺へと帰って行った。
柏木がいよいよ危篤と聞き、今上帝は元気付けるために権大納言の位を贈った。
夕霧も見舞いにやってきた。
柏木はそれとなく源氏の不興を買ったことを告げて、夕霧からとりなしてほしいと頼み、落葉宮のこともよくしてやって欲しいと頼むと、もう帰るようにと夕霧に告げた。
柏木の死
落葉宮に逢えぬまま、柏木はとうとう息を引き取った。
両親の嘆きは激しく、また女三宮も泣いた。
三月
三月に薫の五十日の祝いが催された。
尼となった女三宮も参加しており、久々に見るその姿はまだ尼になりきってはいないように見え、似合っているとも艶であるとも源氏は思った。
薫を抱き上げた源氏はその容姿に柏木の面影を見てとると、それまで抱いていた怒りも失せて柏木を哀れに思い、涙するのであった。
夕霧はというと、事の真相を気にしながらも柏木の遺言を守り、未亡人となった落葉宮の元へ訪問を重ねた。
そしてそのゆかしい暮らしぶりに、次第に心が惹かれていくのであった。