【第5帖】若紫(わかむらさき)【源氏物語あらすじ・解説】
光源氏18歳の三月から十月のお話。
対訳にはなっていませんのでご注意ください。
あらすじ
源氏、北山へ
源氏は瘧(おこり、マラリア)にかかっていた。発作的に繰り返しおこってくる病である。加持祈祷もしていたがあまり効き目がない。
北山に良い修験僧がいると聞き呼び寄せようとしたが、老齢のため来られないという。そのため源氏は自ら北山に向かうことにした。三月の三十日のことであった。
祈祷をしてもらった源氏は、少し散歩に出ることにした。まわりの者も、源氏の気を病から逸らそうと色々な話をする。
してくれた話のなかには、「播磨の明石の浦に住む前播磨守入道が娘を住まわせている家の話」もあった。
その日は発作も起こりそうになかったので、従者は源氏に京へ帰ることを提案したが、僧は一晩泊っていくようにすすめた。
源氏、姫君を垣間見る
昼間に散歩で見かけた僧都の屋敷に行くと、そこで源氏は藤壺によく似た少女を垣間見る。
少女は按察使大納言(あぜちのだいなごん)の娘と兵部卿宮の間にできた娘であった。兵部卿宮は藤壺の兄にあたる人物である。
母親が亡くなってから、按察使大納言の未亡人で祖母にあたる北山の尼君に養育されており、尼君は僧都の姉にあたるらしい。尼君は病気のため、北山で養生しているとのことである。
源氏はまず僧都に、次に尼君にも、理想の妻の話をして少女の後見を願い出たが、「まだ幼い、もう四、五年したら」と断られてしまった。
源氏の帰京と藤壺の愁い
源氏は京へと戻った。
藤壺はというと、病のために里下がりをしていたところを源氏と再会し、源氏の子を身ごもっていた。
源氏を遠ざける藤壺であったが、七月に宮中へお戻りになると、帝が源氏も呼ばれたりするので、藤壺は愁いを覚えるのであった。
姫君、二条院へ
また北山の尼君が亡くなったことを知り、源氏は少女の様子を見に行くことにした。戻っていた京の邸は荒れている様子であった。
父宮にひきとられる予定であるということだったが、母君が父宮の正妻から受けた仕打ちを考えれば酷なことであると思われた。
そのため源氏は、四十九日を待ってからという兵部卿宮に先んじて姫君を二条院に連れ帰ることにした。形式的には夫婦ということになるが、源氏は幼い姫君を理想の女性に育て上げようと考えてるいるのであった。
姫君は源氏を第二の父として慕った。源氏もまたこの関係を楽しんでいた。
父宮はというと、姫君の行方を捜したが、分からずじまいになってしまった。