小倉百人一首 11-20
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17番歌 ちはやぶる(在原業平朝臣)

藤咲
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ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは

やぶる かみよもきかず たつたがは からくれなゐに みづくくるとは

「屏風絵に描かれた絵」を題に詠んだ歌です。

現代語訳

神々の時代でも聞いたことがない。竜田川を染め上げている真紅の紅葉の下を水が行くとは。

竜田川に散って流れる紅葉の美しさをうたった歌です。

「くくる」の解釈について

この歌の「くくる」については、「くくる」「くぐる」の二説があります。

平安・鎌倉あたりは濁点は表記しないので、二つの解釈が対立していました。

「くくる」で解釈した場合

「くくる」は、「しぼり染めにする」という意味です。紅葉で川の水が真紅に染まっている様子を、しぼり染めに見立てた表現となります。

こちらで解釈した場合、まるで川が一枚の布のような、錦絵のごとき美しさを感じることが出来ます。

業平は「屏風絵」をもとにこの歌を詠んだので、「くくる」のつもりで書いたと思われます。

「くぐる」で解釈した場合

「くぐる=潜る」の場合、紅葉の下を水が流れている、という解釈になります。

「くくる」で解釈した場合と比較すると、もみじと水に動きが感じられます。

藤原定家が書いた『顕註密勘(けんちゅうみつかん)』という『古今和歌集』の注釈書があり、それによると定家はこちらの「くぐる」で解釈していたことが分かります。

静的な解釈と動的な解釈、どちらも竜田川に降った紅葉の美しさが目の前に浮かんでくるようです。

作者:在原業平朝臣(ありわらのなりひらあそん)

「六歌仙」「三十六歌仙」のひとりです。

『伊勢物語』の主人公である昔男のモデルと言われています。当代きっての色好み・才人でした。

『三代実録』によると「体貌閑麗、放縦不拘」「略無才学、善作倭歌」。容貌はすばらしく、自由気ままで、漢学の才はなく、素晴らしい和歌を詠む人物、だったそうです。

紀貫之による在原業平評は「その心余りて、詞たらず。しぼめる花の色なくて匂ひ残れるがごとし」(『古今和歌集』仮名序)となっており、感性や情熱は素晴らしいが表現力が足りない、と感じていたようです。

竜田川

「竜田川」は奈良県生駒郡斑鳩町の竜田神社の近くを流れる川で、紅葉の名所として昔から有名です。

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