30番歌 ありあけの(壬生忠岑)
藤咲
咲くやこのはな
つきみれば ちぢにものこそ かなしけれ わがみひとつの あきにはあらねど
『白氏文集(はくしもんじゅう)』「燕子楼」第一首の詩をふまえた歌です。
月を見ると、いろいろな悲しい気持ちがこみあがってくる。わたしだけのためにある秋ではないのに。
元になった詩をふまえて、月を見てわたしほど悲しんでいる人はいない、という気持ちを表現しています。
ただ、場所や主人公が限定されない歌に仕上げているため、「燕子楼」の詩と比較すると「秋」「月」「悲しみ」から受けとる感情が、誰にでも共感できやすいものとなっています。
『至宝抄』では、「ものさびしくあはれなる体、秋の本意なり」とあります。
西暦900年頃の人で、「中古三十六歌仙」のひとり。清和天皇から醍醐天皇まで、5代にわたって仕えました。
宇多天皇の勅命で、家集『句題和歌』(大江千里集)を撰集・献上しています。
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