小倉百人一首 91-100
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94番歌 みよしのの(参議雅経)

藤咲
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み吉野の 山の秋風 さ夜ふけて ふるさと寒く 衣うつなり

しのの やまのあきかぜ さよふけて ふるさとさむく ころもうつなり

現代語訳

吉野の山に秋風が吹き、夜は更け、古都吉野の里は寒くて、衣を打つ砧(きぬた)の音が聞こえて来るよ。

秋風が吹く寒い山の夜、そこに響く「きぬた打ち」の音。寒々しい様子が浮かんでくるようです。

「衣うつ」というのは「きぬた打ち」と呼ばれる布を棒で叩く作業で、主に夜なべ仕事です。秋の夜の歌に詠み入れられることが多いです。

本歌取りの一首

雅経は本歌取りをよくしたようで、この歌も本歌があります。

み吉野の 山の白雪 つもるらし ふるさと寒く なりまさるなり

(『古今和歌集』冬・三二五・坂上是則)

本歌では季節は冬ですが、雅経はこれを晩秋の歌に作り変え、わびしいきぬた打ちの音までを情景に取り込んでいます。

関連記事→31番歌 あさぼらけ(坂上是則)

「衣打つ」とは

「衣うつ」というのは、洗濯や洗濯の仕上げ、または布をやわらかくしたり光沢を出すために木づちで布をたたくことで、「きぬた打つ」とも言います。

「きぬた」は中国では旅に出た夫を待つ妻が打つものとされており、「待つ女」の象徴としても使われます。

現代ではアイロンがあるので家庭で行うことはありませんが、紙や布を扱う職人さんなどはすることもあるようです。

作者:参議雅経(さんぎまさつね)

『新古今和歌集』の撰者で、藤原俊成に歌を学びました。

源頼朝からも和歌と蹴鞠の才能を高く評価され、のちに歌と蹴鞠(けまり)で有名な飛鳥井家をたてます。

京都にある白峯神宮は、もとは飛鳥井家の邸跡です。

京都白峯神宮

京都にある白峯神宮は、明治時代に飛鳥井家の邸宅跡に新造されました。

飛鳥井家は和歌や蹴鞠で有名だったことから、現代でもサッカーをはじめとするスポーツの守護神として崇敬され、および鞠を「落とさない」ことから学業においても縁起が良いとされています。

また、飛鳥井という名からも分かるように、井戸があり、そこの水は『枕草子』168段においても、名水として名前が登場します。

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