小倉百人一首 91-100
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91番歌 きりぎりす(後京極摂政前太政大臣)

藤村さき
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きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに 衣かたしき ひとりかも寝む

ぎりす なくやしもやの さむしろに ころもかたしき ひとりかもねむ

正治二年(1200年)『後鳥羽院初度百首』で詠まれた歌です。

現代語訳

コオロギが鳴く、霜の降りるようなこんな夜に、わたしは狭いむしろに着物の片袖を敷いて、ひとりで寝るのかなあ。

この時代「布団」はなく、畳の上に直接寝るか、もしくはむしろなどを敷き、昼間に着ていた着物をかけて寝るのが普通でした。

「衣かたしき」とは、ひとり寝の寂しさをあらわすときに使われます。共寝のときには男女が袖を重ねるように寝るのです。

またここでいう「きりぎりす」はコオロギのことです。コオロギは悲しみを人間と共有する存在として扱われます。

この歌が詠まれる直前に、良経は妻を亡くしており、秋のさびしいひとり寝の様子が、寒々とした風景で描かれていますね。

本歌取りの一首

この歌は本歌取りで書かれていて、

「さむしろに衣かたしき今宵もや恋しき人にあはでのみ寝む」(『伊勢物語』63段)と、

「あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む」(『小倉百人一首』3番歌

を踏まえて詠まれています。が、この二首の他にも類歌は多いようです。

本歌はともに恋歌ですが、ここでは秋の歌に仕立てられています。

作者:後京極摂政前太政大臣

藤原良経(ふじわらのよしつね)のことです。

1200年ごろの人で、76番歌を詠んだ藤原忠通の孫にあたります。

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