29番歌 こころあてに(凡河内躬恒)
心あてに 折らばや折らむ 初霜の おきまどはせる 白菊の花
こころあてに をらばやをらむ はつしもの おきまどはせる しらぎくのはな
白い「初霜」と「白菊」。そのふたつが混じりあって、幻想的な美しさが冷たい輝きとともに、目の前に「白い世界」が広がります。
現代語訳
よく注意して折るなら折れるだろうか。初霜がおりて目を惑わせる白菊の花を。
綺麗に折ったら折れるなあ? 初霜がおりてよく見分けがつかないけど、綺麗な白菊の花だなあ♪っていう感じでわたしは解釈しています。
「心あてに」の解釈について
「心あてに」で、”当てずっぽうに”という意味であるとしている本と、”心を込めて・注意して”という意味である、としている本があります。
どちらが正しいのかという判断は保留にしておきますが、たしかに”当てずっぽうに折ろうかな”では何か違う気がします。
感想
思わず手折りたくなるような美しさです。霜の中の白菊を愛でながら指でつんつんしているのでしょうか?だとしたらミツネちゃん可愛すぎます♪
紀貫之の歌でも思いましたが、凡河内躬恒の歌も、美しく仕上げているのに遊び心や人となりを感じるというか、すごく自然な感じがして、なぜか心がほっこりする歌だなあと思います。
作者:凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)
「三十六歌仙」のひとりです。
宇多天皇・醍醐天皇の時代、9世紀後半から10世紀前半に活躍しました。
宮廷歌人としての名声は高く、家集に『躬恒集』があります。
また延喜五年(905年)には、紀貫之・紀友則・壬生忠岑と共に『古今和歌集』の撰者に任じられています。
語句と文法
「折らばや折らむ」の「ばや」。
ここでは”仮定条件を表す「ば」”と”疑問の助詞「や」”に分かれます。
「ばや」には願望を表す終助詞もありますが、そちらではありません。
そして、最後の「む」は助動詞の連体形……そう、「や」+「連体形」で「係り結び」になっています。
係り結び(係助詞によって文末の活用形が決まる)
ぞ・なむ・や・か → 連体形になる
こそ → 已然形になる
競技かるたの「おきまど」の語源でもある
競技かるたにもいろいろなやり方があります。
数人で100枚の札を並べて早取りを競う「ばらとり戦」は、この歌に洒落て「おきまど」と呼ばれることもあるようです。
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