76番歌 わたのはら(法性寺入道前関白太政大臣)
藤村さき
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わたの原 こぎいでてみれば 久方の 雲ゐにまがふ 沖つ白波
わたのはら こぎいでてみれば ひさかたの くもゐにまがふ おきつしらなみ
詞書によると、保延元年(1135年)4月に崇徳院(77番歌の作者)が主催した内裏歌合において「海上遠望」という題でこの歌を詠みました。
現代語訳
大海原に漕ぎ出して見渡すと、空の雲と見間違うような沖の白波だよ。
なかなか壮大で、海の浪漫も感じられ、景色もすっと目に浮かぶ歌だと思います。
作者:法性寺入道前関白太政大臣(ほっしょうじにゅうどうさきのかんぱくだいじょうだいじん)
藤原忠通(ふじわらのただみち)のことです。
91番歌の作者良経(よしつね)の祖父で、95番歌の作者慈円の父にあたります。
藤原忠通はのちに保元の乱で、弟である頼長(よりなが)や崇徳院と戦い、勝利をおさめます。
権力闘争の真っ只中を生きた人ですね。そのため却って、詩歌の世界では俗世を離れた歌を詠んだのでしょう。
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