84番歌 ながらへば(藤原清輔朝臣)
藤咲まよい
咲くやこのはな
なにはえの あしのかりねの ひとよゆゑ みをつくしてや こひわたるべき
出典である『千載和歌集』の詞書には、「摂政、右大臣の時の家の歌合に、旅宿に逢ふ恋といへるこころをよめる」とあります。「摂政」とは九条(藤原)兼実のことです。
いわゆる「行きずりの恋」「ワンナイトラブ」を詠んだ恋の歌です。「旅先に逢ふ恋」は題詠歌の題としてはあまり見られないものです。
難波江に生えている蘆の刈り根の一節のような、一夜の仮初めの閨のせいで、あの澪標(みおつくし)のようにずっとひとりで、ただあなたに恋し続けるのでしょうか。
難波の芦は名物で、19番歌にも詠まれています。
崇徳天皇の皇后である皇嘉門院聖子に仕えました。
聖子は保元の乱の際に父と夫が対立する、という難しい立場に立たされた皇后です。作者はそんな聖子を支え、乱後はともに出家をしました。
「別当(べっとう)」とは、もともとは「本務とは別に他の役目を兼ねる」という意味から転じて、組織の長官や責任者を指す言葉です。古代・中世の大寺院においては、寺務を統括・統制する最高責任者のことも「別当」といいます。