98番歌 かぜそよぐ(従二位家隆)
藤咲
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風そよぐ ならの小川の 夕ぐれは みそぎぞ夏の しるしなりける
かぜそよぐ ならのおがはの ゆふぐれは みそぎぞなつの しるしなりける
「寛喜元年女御入内屏風和歌(かんぎがんねんにょうごじゅだいびょうぶわか)」の一首 。
現代語訳
風がそよそよと楢の葉を揺らし、楢の小川の夕暮れ時は夏とは思えないほど涼やかだが、水無月祓が行われているのがまさしく夏の証だよ。
爽やかなイメージのものを重ねつつ、のどかで順調な季節の行事を詠む、入内にともなう寿ぎにふさわしい歌となっています。
入内屏風和歌の一首
この歌は「寛喜元年女御入内屏風和歌(かんぎがんねんにょうごじゅだいびょうぶわか)」の一首で、藤原道家の娘が後堀河天皇に入内するときにつくられたものです。
定家は道家に仕える家人でもあったので、お祝いの意味もこめてこの歌を百人一首に選んだのかも知れませんね。
「入内屏風」というのは、入内する娘に持たせる嫁入り道具のようなものです。
ならの小川
「ならの小川」というのは、奈良ではなく、京都の上賀茂神社の中を流れている御手洗川(みたらしがわ)のことだそうです。
みそぎ
また「みそぎ」というのは、夏の終わりの日(陰暦六月三十日)に行われる”夏越しの祓(なごしのはらえ)””水無月祓(みなづきばらえ)”のことです。
作者:従二位家隆
作者は従二位家隆。藤原家隆のことで、『新古今和歌集』の撰者です。
83番歌の藤原俊成の弟子です。
温厚で誠実な人柄だったと言われています。
まとめ
2番歌にもあるように、季節が順調に移り変わることはめでたいことでもありました。
神事も背景にしつつ季節の移り変わりをさわやかに歌うことで、入内屏風にふさわしく、寿ぎ(ことほぎ)をしていると考えることが出来ます。
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